かつて食物アレルギーと診断されたら、原因となる食材(アレルゲン)は「完全除去」するのが正しいと考えられていました。
現在は、様々な研究の結果、除去は必要最小限にして、食べられる範囲は積極的に食べる方が、早く食物アレルギーが回復していく、と分かってきました。
当院では、下記の検査・治療を行います。
・食物負荷試験
アレルゲンである食物を実際に食べてみて、アレルギー症状が出るかどうかを調べる検査です。
検査としては、
1.本当に食物アレルギーがあるのかを「診断するため」
2.どこまで食べられるのか(制限解除ができるのか)を「調べるため」
という2つの目的があります。
負荷試験で一番問題となるのは、実際に食べてアレルギー症状が出る可能性がある、ということです。
当院では、できる限りアレルギー症状が出ない負荷試験を行いたいと思います。
ですので、これまでの経過から食物アレルギーが明らかだと思われる場合は、1.の「診断目的負荷試験」は行わないことがあります。
また2.の「解除目的の負荷試験」でも、どこまで食べると症状が出るのか、という限界値(閾値 いきち)決めの負荷試験は行っていません。微量誤食に相当する「1/40人前」、2次製品相当の「1/4人前」、制限解除に相当する「1人前」の3段階での負荷を原則としています。
通常、RAST血液検査の結果を元に負荷量を決めて、1時間間隔2回の負荷を外来で行います。
・アレルゲン特異的IgE検査(RAST)
血液検査です。どんな物質にアレルギー症状を起こしそうかの「目安」がわかります。
この検査で食物アレルギーが診断できるわけではありません。
結果が陽性でも食べられることはよくありますし、陰性でも食べて症状が出ることもあります。
食物アレルギーの診断は、「食べたら症状が出る、止めれば症状が消える」が基本です。
・皮膚試験(プリックテスト)
皮膚にアレルゲンエキス(アレルゲンを液体に溶かしたもの)を垂らして、針で軽くひっかき、15~20分後の反応(赤くなったり腫れたり)を見ます。
陽性になればアレルギー症状を起こすリスクがあるかもしれません。
花粉と果物を勘違いして、特定の花粉に症状が出る人が、ある果物を食べると口の中などにアレルギー症状が出る「花粉食物アレルギー症候群」では、果物に針を刺して、それで皮膚検査をする「プリック トゥ プリック(prick to prick)テスト」を行います。
・経口免疫療法(緩徐法)
少しずつ食べて体を慣らしていく治療です。
この治療は初回を外来で行ったあとは、毎日自宅で実施します。1週間に1回、3割程度ずつ増量をしていきます。
アレルギー症状が出る可能性がありますので、納得がいくまで院長から説明を受けてください。
小児アレルギー学会は現在、入院して行う急速法経口免疫療法は推奨していません。また毎日自宅で食べ続ける緩徐法経口免疫療法も、まだ研究段階であり、治療として確立している訳ではなく、経口免疫療法に詳しい専門医が行うべき、と広報しています。
この治療を受けたら、食べられるようになった、という人が少なくない一方で、どうやっても食べられるようにはならなかった、という人もいます。その点も納得がいくまで院長から説明を受けてください。
(2017.11.26 改訂)
(2017.11.10.)