食物アレルギーの経口免疫療法

神奈川県立こども医療センターのアレルギー科で治療されていた食物アレルギーのこどもが、アナフィラキシーを起こして、現在も入院加療中である、と発表されました。概要は、こども医療センターが公表しています。お子さんと保護者のかたには、心からお見舞い申し上げます。
非常に衝撃的なニュースで、全国の小児アレルギー科医達がショックを受けたのですが、このたび宇都宮市で行われた小児アレルギー学会で、経口免疫療法に関する緊急報告が行われました(学会員にむけては、Webでスライド公開中「食物アレルギー患者における重篤な食物アレルギー症状の調査結果」)。

神奈川こどもの事例は、牛乳アレルギーで入院急速免疫療法を行い、治療17日目に135mL 摂取が可能になり退院。その3ヶ月後、維持量を摂取中の出来事でした。
学会にはある程度詳細な報告がなされているようですが、保護者の方の意向もあり、学会としては現在神奈川こどもが発表している以上の概要は示せない、とのことでした。正確な発症時期も不詳です(が、報告に立った海老澤先生が少し口をすべらして、あぁやっぱり春のアレルギー学会のドタバタはそういうことだったのね、と分かる人には分かる話となりました)。

経口免疫療法でアレルギー症状が起きやすいのは、増量したタイミングが主ですから、維持療法に入って、しかも3ヶ月も経ってからのアナフィラキシーというは、あまり聞きませんし、それだけにどう対処して良いのか分からず衝撃的なわけです。

学会のシンポジウムでは、他にも重篤な事例が数名ながらあった、という緊急調査報告がなされました。多くは誤食や経口負荷試験中なのですが、免疫療法中の事例もありました。
牛乳によるトラブルが多く、また合併している喘息のコントロールが不十分なケースが多かったようです。今回の神奈川こどもの事例も、喘息発作から2日後です。

経口免疫療法はやり方として、入院して短期間に増量していく「急速法」と、外来・自宅で毎日摂取しながらゆっくり増量していく「緩徐法」があります。
この両者が同じようなリスクをかかえているのか、までは今回示されていませんが、学会としては経口免疫療法はあくまで研究的位置づけであり、一般的な治療法ではないことを再確認し、熟知した医者が緊急時の対応をきっちり説明した上で行うべきだ、とこれまでの勧告を再確認しました。

喘息発作から2日後でも重症なアナフィラキシーが見られたことから、体調不良時にはより慎重に対処すべきだ、と言う点も再確認されました。

というわけで、現在経口免疫療法を受けている患者さんには、

・基本的なプロトコール(やりかた)をきちんと守り、自分勝手に変更しないこと
・不明点はよく担当医と相談をすること、説明不足で免疫療法を行わないこと
・喘息発作や発熱その他体調不良時には無理せず、試験を休むことも検討すること
・緊急時の対応について、担当医によく相談をしておくこと

と言う点を再確認して頂きたいと思います。

また学会としては、現在実施されている経口免疫療法をすべて中止する必要は無いと考えています。今後も、こうした問題のある事例を集積して、対処法を検討していくことになります。

自己判断で中止をすると、かえって危険なこともあります。
ご不明・ご不安な点は、主治医にお気軽にご相談ください。

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